Vol.74 転職で年収アップ作戦
転職理由の筆頭にあげられるのが給与問題。転職できてさらに収入もアップできれば言う事無しだ。今回は収入アップに繋がった勝因エピソードをご紹介しよう。
「小さなソフトウエアハウスに勤務していました。仕事は大手メーカーのシステム開発の孫請け。求められるクオリティも高く、仕事も面白かったのですが、いかんせん孫請けでは給料は振るわず・・・。そのうち会社の業績が悪化したので転職。次は一段上がって下請け企業。孫から子に移動しただけでも給料アップになりましたが、それにしても前の会社の給料が安すぎたと実感」
人材がいくら優れていても、土壌が悪ければ年収が低くなるとうことがある。そういう企業では昇給率も頭打ちだ。がんばって年収をアップというより、能力にあった金額を支払える企業を探せば、自然と年収がついてくるものと思われる。
「面接で向こうは採用前提。条件や他の会社への応募なんかを考えつつ即答を避けていたら、駆け引きモードだと受け取られたらしく『あなたには是非来てもらいたい』『舵取りができる人が欲しい』『給与もできる限り検討するから(希望額を)提示してくれ』とテレビショッピングのように畳み込まれた。後日色々調べたところ、長年契約社員と派遣だけで回していたせいか、人材が定着しないらしく困っていたようだ」
ある意味、手っ取り早く交渉するには人手不足の会社が狙い目。が、人手が足りないということは、その原因に問題があることも。また人材欲しさに高給を謳う場合は、歩合制や契約制などを後で持ち出すこともあるので、その点のジャッジはシビアに。
「営業部長のOさんはそこそこのポジションなのに、今でも顧客の間をかけずりまわってモノを売るのが大好きという、根っからの営業マン。それが急に転職すると言う。新しい会社は聞いた事も無い、自然派食品の販売。なんでそんな会社に? とみんないぶかしんだが、後日Oさんの狙いが分かった。今までの顧客に転職の挨拶がてら、新しい会社の商品を勧め、すごい売り上げを記録。一躍トップ年俸を稼ぐ営業マンになったとか。同じ職種だったら顧客の取り合いになるからと、あえて別の業種を選んだらしい」
営業マンやコンサルタントなどの転職の場合、スキルに加えて顧客獲得力は大きな魅力だ。ただし業務上の守秘義務や、個人情報保護の観点から難しい問題も含んでいる。顧客情報の取り扱いはくれぐれも慎重に。
一、業績が伸びている企業を狙え
一、人手不足の企業を狙え
一、転職に“手みやげ”は効果的。だが守秘義務や顧客情報の取り扱いには注意を
作者: 松永 夏幸
出版社/メーカー:ダイヤモンド社
価格: ¥ 1,680 (税込)
転職で年収アップを考える人は多いが、ドーンと1000万円を目指すのが本書。目玉は実際に年収1000万円転職を果たした人たちの詳細な一覧。
Vol.73 転職 今時の若者は・・・
先週に引き続き、若い転職者の失敗や、困ったちゃんのエピソードを取り上げる。初歩的なミスから、今時の新人がやりがちな失態まで。初めて転職する人は要チェックだ。
「職場が駅から遠い代わりに、定期的にシャトルバスが出ている会社の面接を受けた。事前にバスの時間とバスのり場の案内を貰っていたのだが、緊張のせいかよくわからないけど、西出口と東出口を間違えてしまった。来ないバスを延々待って、不安になったところでプリントアウトしたメールを確認して愕然。すでにシャトルバスの発車は無く、面接開始時間から30分以上たっていた。あわてて会社に謝罪の電話をかけたら、なんと人事担当者が自分の車で駅まで迎えにきてくれて、そのまま面接スタート。『たぶん間違ってるんだと思いました。間違い易いので、毎年新人のうち一人ぐらいはやるんですよ』と朗らかに言ってくれたけど、緊張と申し訳なさと動揺で、その後何をしゃべったのか覚えていない」(製造/Mさん)
ありがちなミスだけに、この手の失敗が許されるのは、第二新卒や若手のうち。年齢が上がれば命取りにもなる。バスが一時間一本など、時間によっては交通手段が極端に限られる場合もあるので、ネットの乗り換え案内などを利用して、運行時間・所要時間等、事前にチェックしておくこと。
「役員のコネだとかで採用することになった女の子。一応形ばかりの面接をしたけど、その時から酷かった。待ち合い中も携帯取り出してメールをカチャカチャ。さすがに面接中のメールは無かったけど、入社後は仕事中も携帯を手放さず。後ろを通った時に覗いてみると『今仕事チュ~ チョーウザいんですけど』みたいな内容を誰かに送ってて萎えた。上司がたまりかねて『仕事中はマナーモードにしておきなさい』と注意したら『身内に年寄りがいて、何が起こるか分からない年なので、常に連絡は取れるようにしておけと言われてます』と言い返された。ちなみに彼女の身内はうちの役員か株主。コネをチラつかされ、ひたすらイライラ」(メーカー/Fさん)
携帯を手放せない=プライベートを引きずると見られとにかく不利。緊急の連絡が入る場合でも、就業時間中のメールに肝要な職場は少ないだろう。
「『でも、それって私の仕事なんですか?』と逆切れした新人デザイナー。専門教育も経験も無かったので見習いとして採用した子だった。最初は雑用も多くて、業界紙からめぼしいニュースをピックアップしてファイルする作業を命じられた。その時は『はい』と殊勝な返事をしていたものの、実際には全然やってなくて、たちまち古新聞の山。その点を上司から指摘されると冒頭の一言が出て『やりたい仕事と違う』『だって新人なんですよ』・・・ってお前が言うな! 最後は『不慣れな新人だと思って、みんなで私を雑用係にする!』と1ヶ月で辞めた」(広告/Tさん)
新人であること、仕事を教わっていない事、仕事内容がつまらないなどは言い訳にはならない。しかも「でも」と「だって」は職場で最も嫌われる表現のひとつ。少なくとも言葉遣いぐらいは改めて。
一、初めての場所に向かう時は、所要時間と乗り換え経路を事前にチェック。遅刻は命取り。
一、携帯OFFで、ビジネスとプライベートを切り替えよ
一、新人であることは言い訳にならない。
一、「でも」「だって」等稚拙な言葉遣いは改めよ。
作者: 中谷 彰宏
出版社/メーカー:海竜社
価格: ¥1,260 (税込)
新人に向けて書かれた、仕事上でのちょっとした気配り本。でも社会人・転職者が改めて読んでも得るところが大きい一冊。
Vol.72 転職 若さ故の失敗
初めての転職、緊張しながらやってしまったあんな事、こんな事。今思い出しても顔から火が出て、穴があったら入りたい・・・。
今回は若い転職者がやらかしてしまった失敗をご紹介しよう。
「ガチガチに緊張していた面接。指示された通りに動くだけで頭がいっぱいで、指定された椅子に座って面接の応答なんかをイメトレしてた。
そこへ面接担当者が入ってきて、さらにその上司も入ってきて名刺交換ってことになったんだけど、相手が手にもった名刺をなかなか前に出さないし、こっちを凝視してくる。あれっと思ってたら、立って挨拶するのを忘れてた」(Sさん/販売)
名刺交換は無くても、人との挨拶は立ってするのが基本。他にも上座下座など、場数を踏むと慣れることでも、経験がない・知らないとなると無駄な緊張のモトになる。
こうしたビジネスマナーの失敗は、業種や業界によって受け止め方が違う。基本的に客前に出る仕事で新卒でないなら、細かくジャッジされると思った方がいいだろう。
「事務の欠員を転職雑誌で募集した時のこと。うちのような小さな出版社でも、マスコミ人気で結構な人が集まりすごい倍率に。大部分は不合格で一斉に文書でお知らせを送ったところ、その数日後に気の強そうな女の人が乗り込んで来た。しかも受付で声をあげて大暴れ。話を聞けば不合格にした応募者のお姉さんで『うちの妹のどこが気に入らない』だの『妹は高校出てからずっと苦労して働いてきたんだ!』などと口走ってカンカン。
こちらも倍率や経験者優遇の話を説明しているうちに、お姉さんも段々落ち着いてきて、最後には泣き出した。
親はすでに他界していて、気の弱い妹が転職先も見つからず落ち込んでいるのを見て、居ても立ってもいられなくなり、自分がなんとかしないととやって来た。でも、こういう時どうしていいのか分からず、つい声を荒げてしまったと。最後には非礼を詫びて頭を下げて帰った。大変だったけど、ちょっといい話風にホロっとした」(Kさん/出版)
これは極端な例だが、選考結果について問い合わせをしたり、採用後も勤務内容・時間について物申してくる“保護者”はわずかだがいる。しかし、じわじわと増える傾向にあるため、人事担当者の頭を悩ませているとも。
「転職セミナーに参加。ある企業のブースで説明を受けたのですが説明がとにかく長かった! 聞いているうちに『違うな』と思って後半は半分流してたけど、だんだん苦痛に。やっと説明が終わってブースから出てたところで、ある女の人と目があった。
男の人がほとんどの中で、女の人は私とその人だけ。年齢も近い。さらにエレベーターの中でも一緒になったので、つい親近感から
『××社のブースにいた方ですよね』
と話しかけた。
『長かったですね~。あの会社受けようと思ったんですけど、あの人上司になるんだったらちょっと考えちゃいました』
と続けたらその女性は微妙な顔で
『・・・私、そこの社員です』
参加者じゃなくて、スタッフだったんです。もう後は早くエレベーターが止まる事だけ考えてました」(Mさん)
セミナーが終わったからといってすぐに気を抜くのは厳禁。企業を訪問しているなら、建物を入った時から出るまで見られていると思った方がいい。むしろ気が抜けた時の方が、面接中は見せない姿が出る。
面接が始まる前や終わった後、対応にでた受付や事務のスタッフに、応募者の印象を聞く人事担当もいる。軽口をたたくなど危険極まりない行為だ。
一、第一印象は基本的なビジネスマナー磨かれる
一、“保護者”の問い合わせはご遠慮いただく
一、会社に入った時から、出る時までが面接です
出版社/メーカー:ビクターエンタテインメント
価格: ¥2,462 (税込)
テレビ教養講座風に「人を怒らせるコミュニケーション術」をレクチャーするコメディDVD。若さ故の過ち防止に。特に講師のリアリティは秀逸。
Vol.71 さらに面接でウケたエピソード
前回に引き続き、今週も面接で相手を引き込んだ、転職者のエピソードをご紹介。
共感から内定につながる事もあれば、逆に盛り上がったものの不採用に終わる事もある。大切なのは、ウケること+α。そのαとは?
「ニュースになった某L社の株で損をした話ですね。といっても小遣い程度の出資なので、大きな打撃は受けなかったんですが、時事ネタとしてこの話をするとどの面接でもすごくウケました。『だいぶ損したの?』とか『被害者の会とかに入ってるの?』とか質問続出です。ただ株取引自体に拒否反応を示す人もいましたし、『なんでラ●●ドアの株買おうと思ったの? 胡散臭いと思わなかったの?』と否定的な人や、『ホ●●モンとか好きなんだ(笑)』とビジネススタイルを信奉してると解釈されることもあって、最近はもう言ってません」(金融/Iさん)
誰でも知っているニュースは、話の導入としては最適。しかし応募職種・業界に関連していなければ、ただの雑談で終わることも。
またニュースの捉え方で、応募者の人となりを推し量られる事もあるので、意外に注意が必要だ。
「一番大変だった仕事の説明に、ある従業員の持ち逃げ事件をあげました。採用したばかりの人だったんですが、客先に出したとたん、クライアントの会社にあったものを持ち逃げして行方不明になってしまい、やれ謝罪だの賠償だの、行き先を調べろだのとにかく大変。逃げた社員について調べたらギャンブルにはまってた事が発覚。盗んだものは売りに出すだろうと、店舗に連絡をいれたり、ネットオークションに張り付いて出品をチェックしたり……。最後は網にかかって捕まえることが出来たという話を捕物帳気分で盛り上げて話したんです。でも、ちょっと詳しく言いすぎたんですね。あまりにも事件の詳細をバラしすぎたので、面接担当者に仕事上の守秘義務について指摘されて、一転して気まずい空気に。自分もしゃべりすぎましたけど、聞くだけ聞いといてそりゃ無いよと思いましたよ」(コンサル/Tさん)
今の職場での失敗談や、一番大変だったプロジェクトなどを質問する担当者は多い。
問われた事に素直に答える姿勢は大事だが、話して良いボーダーラインは自分で守る事。守秘義務を縦に何も言わないのでは頑な印象をあたえるが、話しすぎると逆に信用をなくす。社会人としての責任感にも関わる事なので慎重な表現を心がけて。
「メーカーで制作管理をしていたのですが、規模縮小で転職活動中。今までのように現場の仕事につきたいと製造会社などを回っているが、発注側の人間ということで『下請けの仕事に満足できるのか』と警戒されるばかり。焦って『発注側といいますが、実際はワンマン社長のチェックを通らないと何もできません。貧乏性の社長のおかげで余裕のある制作なんかした事はありません』といかに社長のムチャな注文と戦ったかを力説したら、共感してもらえてやっと内定」(メーカー/Gさん)
面接を盛り上げるだけでなく、採用に結びつくトークには共感が必要不可欠な要素だ。採用とは仲間探しと同じ。特に中小企業ではその色合いが濃く、同じ感覚をもっている、同じ気持ちで仕事に向かえるという保証は時には採用の決定打になる。
一、雑談からでもその人の主義思想は読み取られる
一、素直な応対は重要だが、守秘義務を守れないようではかえって不安をあたえる
一、採用に結びつけるには、トークで共感してもらうこと
作者: 橋川 硬児
出版社/メーカー:明日香出版社
価格: ¥1,365 (税込)
テクニックよりもメンタル部分を大事にした、独特のトーク本。話術に自信の無い人、口べたな人は是非一読を。
Vol.70 面接でウケたエピソード
面接は寄席やお笑いライブではない、とはいうもののやはり会話は弾んだ方がいい。
そこで今回は面接で担当者にウケた、食いつきがすごかったなどのエピソードを拾ってみよう。
「数年前、新人研修の講師に選ばれた時の話をした。元々人前での説明が苦手なので、その時は少し前に朝礼で営業の社員が話してバカウケしていたネタを拝借することにした。まずは軽く笑いを取ろうと話し始めたところ、新人たちに落ち着きが無い。何かヘンな話をしているのかとこっちはドキドキ。しかもオチに至る前にそこかしこで笑いが漏れ出した。でもウケているという訳ではなさそう。実は、自分の直前に講師を務めた社員が、まったく同じネタを話の枕に使っていたことが発覚。以来、オリジナリティには人一倍敏感だと締めくくった」(コンサルティング/Hさん)
話しとしても興味深いが、自分の不得意部分とそれを補おうと工夫した点なども、あわせてアピールできているところが面白い。
「複雑な人間関係で揉まれたとアピールしたら、具体例を求められて出した話です。当時私の上司のマネージャーが部下の女の子と不倫していました。しかも奥さんも同じ社内にいて、他部署のマネージャー。奥さんが何かの拍子でうちの部署にやってきた時など、緊張感はハンパではありませんでした。奥さんも彼女も性格がキツいことで有名で、喧嘩にでもなると仕事どころではありません。しかも彼女の方も奥さんに張り合おうとするのでこっちにも注意が必要で。イベントなどでこの3人が一堂に会さないよう、シフトや役割などを細かく設定し、ニアミスすら無いよう本当に頭を使いました」(メーカー/Sさん)
面接担当によっては反応が分かれるネタだが、人間関係に気を使うスキルは養われたと思われる。ただ、この手の話題は野次馬根性がちょっとでも見えると、たちまちイヤミになるので要注意。
「人間関係の幅広さを語ろうとして、ついうっかり『男性女性問わず友人が多いせいか、合コンのセッティングを頼まれる事が多く……』とコメント。その瞬間、面接官の目の色が変わった。言いすぎたかな? と思っていたら『それは……、ぜひお願いしたいですね』『女性は何人ぐらい呼べそうですか?』などと食いついてきた。その後も面接官同士、目と目で会話しあったりしてまんざら冗談でもなさそう。この職場は男性の独身率がシャレにならない状況だと後で分かった」(開発/Gさん)
最後は少々“ご愛嬌”のエピソード。その企業で一番必要としている要素に触れた時、担当者の食いつきがいいというのは変わらない事実だ。
ただ、この後Gさんは内定が出たものの、仕事以外の事で必要とされていたと感じて辞退している。
一、面接官を引き込むには、イタくない程度の失敗談も効果的
一、共通の危機感があれば食いつきも良し
一、話にはオチ(どう対処したか)があること
作者: 野口 吉昭
出版社/メーカー:PHP研究所
価格: ¥ 1,575 (税込)
コミュニケーション能力を「伝える力」「ロジック力」「聞く力」などに分類し、それぞれを磨くトレーニングを紹介。自己チェックが評判の一冊。
Vol.69 リストラ人材採用しますか?
人員整理の果ての転職活動。気になるのは、リストラが理由の場合、人事担当者はどう受け止めるかということ。そこで今回は、気にする人・しない人それぞれの意見に耳を傾け、リストラからの転職の注意点を探ってみたい。
「今時、こういう経緯の人は多いので」(不動産/Jさん)
「会社の方向性が変わったなどの理由なら、その人自身の能力を越えた問題なので、特に問題にはしません。大規模な人員整理をするような企業は規模が大きく、仕事の進め方や経験等で、中小企業ではまだまだ欲しいと思う人材が多いですね」(メーカー/Wさん)
「リストラ経験者を採用しましたが、ただ辞めさせられたというのではなく、かなりの修羅場をくぐってきた猛者。相当の経営不振期を経験していたため、トラブルの場面でも処理能力が高かった」(販売/Cさん)
「新卒での就職では、会社のミスマッチは良くある事。退職の経緯は不問でポテンシャルを見て採用します。ただ、年齢が上の方だと、やはりリストラに至る経緯に責任も出てきますから簡単には判断できませんね」(メーカー/Nさん)
「流されてるだけの、ただただ大人しい人、という印象だったので」(販売/Fさん)
「自分から転職を希望する人に比べ、自発性が無く消極的」(流通/Aさん)
「リストラ前の収入を聞いたが、それと同レベルは出せなかった。本人はそれでもいいと力説していたが、仕事欲しさで冷静さを欠いているようだったので、丁重にお断りした。本人がその時いいと思っても後々不満が大きくなり、妥協できないのが収入の問題だから」(製造/Dさん)
一社員レベルでは対処できない事、今時珍しく無い事、とリストラ退職を、特に問題にしない企業は実は多い。それでも忌避される理由となると、年齢の問題や、転職者個人のパーソナリティーによるところが大きい。
リストラはショックな出来事だが、それを引きずったり、気弱になることこそ致命的。頭のスイッチを切り替え、自信を持って転職活動を行いたい。
一、リストラからの転職は年齢によって評価が分かれるところ
一、リストラも職業経験のひとつと心得よ
一、退職は会社都合でも、転職活動は自主性をアピール
作者: キャメル・ヤマモト
出版社/メーカー:幻冬舎
会社員を「稼ぐ人、安い人、余る人」に分ける著者が、「余る人」について記した一冊。最終章の余る人になってしまった時の対処方法は一読の価値あり。
Vol.68 リストラサインで転職に備える
前回は会社からの評価が下がり始めた時の様子をご紹介したが、今回は一歩進んで企業が積極的に人員整理を始めるきっかけをご紹介したい。
普通の時なら、従業員を自主的に退職させる、また転職準備期間を設けられる企業も、余裕を失えば急な肩たたきや、配置転換が続出する。就労環境が悪化する予兆とも言えるのだ。
まず必ずといっていいほど、人員整理が行なわれるのがこのケース。
「経営不振で取引先の大企業に吸収され、経営を立て直す事になったうちの会社。最初は『有名企業の社員になれる?!』とみんな落ち着かなかったが、そう簡単にはいかなかった。大会社から管理の為の社員が大勢派遣されてきて、押し出される形で生え抜き社員は続々と解雇。生き残ったのはほんの一握り。それでも吸収合併後は社員同士の諍いが多く、少数派の生え抜き社員たちは涙を飲む事が多かった」(メーカー/R氏)
二つの企業が一つになる以上、余剰人員が産まれるのは必然。しかもこのように、片方が経営に失敗し、援助する場合はさらに厳しい整理が待っている。
「社長直属の仕事をするとだけ説明され、うちの会社に出入りするようになった人がいる。説明通り、他の社員との交流は一切無く、何をしているかは謎。その後新規事業が始まったと思うと、失敗したり、今まで無かった社員の降格処分があったり、昔からの重役が社長に離反したりと社内が急激にあわただしくなった。実は、社長直属の部下は、経営に行き詰まった社長が頼った経営コンサルタントだった。コンサルタント氏のアイデアで会社のあり方まで大きく変わりかけ、あわてた役員が反発し、目下抗争中」(流通/Mさん)
経営に自信を無くした社長が、社外にブレーンを求めるケースだ。他に似たようなケースに、株を押さえられ、投資会社から人材が送られてきたケースや、もっと酷いものになると、社長は占いや宗教に走り、“お告げ”で人事を左右しはじめた、などの話も。何をしているか分からない新人、というのは会社の根幹に関わっている可能性があり、要注意だ。
社内が落ち着かない時に退職者は出るものだが、中でも注意したいのが、重要なポストの人物と、経理担当者の退職だ。
「長年務めた経理の長が、定年にまだ間があるのに退職することになった。その後経営は急激に悪化し、社長はメインバンクを変更せざるを得なくなった程。今思えば、経理の上司は『悠々自適の田舎暮らし』と言っていたが、退職金が確保できるギリギリの時期で退職したに違いない」(製造/Kさん)
経営状態をつぶさにかいま見られる経理マンの動向は影響力が大きい。
「今まで待遇や評価は会社が決めてきたが、ある時から『評価について双方での理解を深め、確認をする』という理由で個人面談をするようになった。それぞれの社員の空き時間を利用するので、社内では始終誰かと誰かが、個室で話をしているような状態に。その翌々月ぐらいからまとまった数の退職者が出るようになった。評価の確認という理由で、個別に退職を勧められた社員が結構いたらしい。自分の番が回ってくる前は、退職勧告か普通の面談か、かなりドキドキした」(開発/Fさん)
上司と落ち着いて話す時期は、仕事が一段落した直後、従業時間外、休暇の前など、時間が取りやすいタイミングが選ばれる事が多い。このケースのように、会社側が面接の時間を設けなくても、仕事が落ちつくべき時間帯に、深刻な顔で話し込む社員が目立つようになったら、何か動きがあると言える。
一、合併・統合などには人員整理がつきもの
一、危険な職場は、古くからいる人材、経理のプロが逃げ、謎の新人が増える
一、一段落するタイミンぐで、深刻な顔で打ち合わせをする人が増えたら要注意
作者: 中森 勇人
出版社/メーカー:岩波書店
¥ 735 (税込)
非情なリストラと戦った著者の記録。まさにあの手この手の退職勧告、リストラの具 体的な進められ方がキーワードでわかる一冊。
Vol.67 あなたは会社に不要な人材?
人事関係にドラスティックな外資系企業では、不要とされる人材には「君は当社では必要な人材では無くなった。いついつを持って雇用契約を解除する」などとハッキリ通告される。日本企業ではなかなかそうはいかない。
では、どうするか。自主的に退職するよう、ジワジワと待遇を悪くしていく。気がついた時には仕事内容も待遇も満足いかない状態に。そこから希望の環境を勝ち取る転職活動は、かなりのハンデである。
会社からの評価が厳しくなった? と思う前に、その兆候をいち早く掴むポイントを、これを潮時と新しい環境を探す、もしくは評価をアップさせるよう頑張るきっかけにしてほしい。
「上司から『頼りにしてる』『お願いする』などの言葉で細かい作業から、他部署の応援まで色々やってきた。上司は口先では褒めるけど、重宝されても、敬意を払われている気がしない。やりたい事とは違う忙しさで、道を見失いそうになる。」(製造/Iさん)
忙しい毎日を過ごしているから、会社から必要とされている?必ずしもそうとは言えない。要は忙しさの中身。させる仕事が無いと評価されたために、いろんな雑用を与えて忙しくさせている可能性が大だ。
「部署の責任者の上に、さらに管理職を置くことになった。やってきたのは営業のベテラン。営業に席を置いたまま管理・監督だけするという掛け持ち状態。赤字続き部署だったので専門知識のリーダーに、数字の稼げる管理者を入れて二頭政治にするという説明だったが、営業部に吸収されてしまった。メンバーで営業が出来ない・やりたく無い社員は関連会社に移籍を迫られてる」(情報/Hさん)
責任者や、部署のメインになるような有能なスタッフに二足のわらじというのは、部署の存在に関わる危険信号。いずれ重要な人材だけをすくいあげる予兆かもしれない。
「社内のある部署が分割・子会社化されることを業界ニュースで知った。びっくりしたねえ~と同僚に話しかけると怪訝な表情。役員とパイプがある社員の間ではとっくに知れ渡ってたらしい。何も知らないのは入ったばかりの新人とバイトの学生と・・・俺」(広告/Tさん)
言うまでもなく、かなりヤバい状態。他にも社内人事や講習会、イベントなど、人材を選別して参加させたり、情報を与えたりしている場合は要注意だ。
「忙しくて休日出勤の連続。有給も手つかずで残ってた。この会社にいる限り消化できないとあきらめてたけど、プロジェクトが一段落した時あっさり休みが取れた。その後も代休も有給も特に問題なく取れるようになったと思ったら、『休んでばかりなので』と閑職に異動になった。」(営業/Mさん)
休暇は社員の権利とはいえ、周囲とケタ違いに休む、繁忙期に休むなどする社員は、会社にとって悩みのタネ。休みをとらせないよう働きかけるのをあきらめ、辞めさせる為に泳がされていたケースだ。また重要なポストから外された故に、休暇が取れるようになったり、あからさまな場合では、まとまった休暇を与える代わりに次の仕事を探せ、とにおわせる職場もある。
今まで休めなかった職場で、急に休暇が取れるのは、何かある。
「わりと厳しい納期の仕事があったが、間に合いそうに無いと焦って泊まり込みを続けていたら『あれは別に急ぎじゃなくなった』と納期が伸びた。次の仕事も納期が決まったと思ったら変更変更。おかしいと思ったら、自分の仕事は試用品扱いになっていて一切表にでていなかった」(開発/Kさん)
一線から外されたが為に、求められるものが少なくなった事例だ。休暇の件同様、仕事が楽になったとよろこぶと後が恐い。
一、休暇が取りやすい、仕事がラクになったなど、職場環境の好転反応に気をつけろ
一、複数の仕事を掛け持ちする社員がいたら、動向を探れ
一、自分の知らない職場のニュースが無いかアンテナを張り巡らせろ
作者: 熊 隼人
出版社/メーカー:主婦の友インフォス情報社
¥1,365 (税込)
企業の人事担当者向けに書かれた本ですが、辞めさせたい人材の条件を探る本として かなり有効。企業から「イラナイ」と言われる要素が無いか、これでチェックを。
Vol.66 みんなの「辞め時」タイミング
転職に大事なのはタイミング、と言う人もいる。たしかに辞め時、辞めて得する時期というものがある。転職して良かった人、出来なかった人、辞めちゃったけど損した人のケースから、今日はスムーズに希望の転職が出来る「辞め時」を考えてみよう。
家電メーカーに3年務めたところで、コンサル業界に転職した村木さん(仮名)。選考には4次までかかり、採用側のジャッジもまっぷたつに割れていたと言う。村木さんが
「若すぎる」
という理由だったらしい。講習会や企業のベテラン担当者を相手にするこの仕事、25歳そこそこの若い人材では押しが弱く、頼りなく見えてしまう恐れがあるというのだ。
村木さんの周囲にも
「25でコンサルなんて早すぎる。コンサルなんて名前だけで、実際は営業やらされたりするんじゃないか?」
と危惧する人もいた。
あちこちから心配されていたが結果は内定。村木さんもそれを受けて、転職に踏み切った。
「成果主義なので給料もまだまだ少なくて、しかも異業種なので勉強することばかり。毎日深夜残業です。でも今転職して良かったと思いますよ。逆に20代の今でないと、こういう環境の変化に耐えられなかったと思います」
かなりの忍耐と挑戦が必要だったからこそ、あえて若い時期を選択した村木さん。そこに後悔はなかった。
「辞めたい」「でも今のスキルではレベルダウンするかも」「もう少しスキルをあげてから」とぐるぐる考え続けてタイミングを逃したのが太田さん(仮名)だ。
「勤続7年目で九州に飛ばされてしまいまして・・・。本社で権限があるほどえらくも無く、仕事を任せきれない若手でもなく、中途半端に社歴が長い為にロックオンされたようです。生まれも育ちも首都圏で、縁の無い土地に行くのは正直抵抗がありました。慌てて転職先を探したのですが、にわかな準備期間では満足な結果も出せず・・・結局九州へ」
その後も九州―東京の間で、Uターン転職をすべく働きかけているのだが、
「なまじ距離がある分、企業の方の腰が引けてしまうこともあって。同じ東京なら『ちょっと話聞いてみようか』となる所も、『お話だけで、わざわざ九州から来ていただくのは申し訳ない。何かのおついでがあれば……』と、選考のハードルがいきなり上がってしまうんです。こんなことなら転勤になる前に、何が何でも転職しておくべきでした」
会社員であればいつ何時立場が変わるかわからない。太田さんの場合は転勤だったが、部署移動や、出向なども転職に影響してくる。自分が希望する仕事についていられるうちに、次の仕事を視野に入れるのも大事なことである。
頑張って入った会社。でも聞いていた話と違う。どうも自分のやりたかった事と違うなど、会社とのミスマッチに気付いた時、社員・企業、双方の傷が大きくならないよう、早めに辞めるというのが安全策だ。しかし時期によっては少々損をする。
「入社して1ヶ月は無我夢中、2ヶ月目ぐらいでわき上がる違和感を押さえて、3ヶ月目ごろから仕事内容に対する不満が出ていました」
と語る商品企画の山本さん(仮名)。
「けど、やっと終わったと思った転職活動をまた始めるおっくうさと、3ヶ月で辞めたら次の転職に不利だと思い込んでしまって」
最低一年は頑張ろうと思い返して勤務を続けていたものの、
「もう我慢も限界」
とある日発作的に辞表を提出した。入社から5ヶ月目のことだった。
しばらくは貯金を切り崩し、失業手当が給付されたらそれを貰って次の仕事を探そうと思っていた山本さんは愕然とする。
「失業手当の受給資格は6ヶ月以上在籍していなきゃいけなかったんですね」
あと1ヶ月退職をのばしていれば、90日分とはいえ、手当が出ていたのである。
一、若さは転職の幅を広げる。
一、転勤・異動のある職場では、したい仕事、いたい場所にいる間に転職活動を。
一、年齢・勤務期間により、失業手当の給付日数に変化が。
少しでも得をするには辞めるタイミングを見誤るな。
Vol.65 採用年齢オーバーの困った人たち
前回は本人の力量やヒューマンスキルが備わっていれば、採用年齢オーバーであっても、受け入れた例をお伝えしたが、今回は一歩進んで年齢オーバーで入社したものの「これはちょっと……」と敬遠されてしまったケースをご紹介。
周囲の社員より、年上になる転職者は注意されたし。
「WEBプロデューサーとして採用されたSさんなんですが、最初にやったのは部署中の社員の年齢を聞いて回ったこと。年下と見ると尊大な態度になって『俺が教えてやる』『俺が前にやってきた仕事では』と長々とコーチし始めるのでびっくりしました。
隣の部署に、ものすごい老け顔の新人がいるんですが、しばらくの間彼にすごく丁寧に挨拶していたのには笑いました。年上だと思ってたんでしょうね。でもすぐ本当の年齢を知って、挨拶すらしなくなったのにはあきれました。
プライドが高くて、人から教わるのがキライなようで、指示を受けていてもいつのまにか『自分は』『自分の時は』と話の主導権をとろうとするので、『仕事を覚える気が無いのか!』と一喝されたこともありました。
プロデューサーという職業上、ある程度の押しの強さは必要だと思いますが……」(広告/Rさん)
「総務の管理職として採用された、もうすぐ50歳というKさん。以前は大きな企業にいたらしいのですが、リストラにあったとかでツテを頼ってうちに採用されたらしい。
年齢も年齢なので、バリバリタイプでは無いと思っていたが、予想以上に大人しい
人で、時々窓の外の景色を見てはぼんやりしている。
歓迎会の席でお酒が入って、
『この年でこんなことになるとは思いませんでした・・・』
とブルーになって、この人は前の職場を思い出してたんだと納得。
その後も、呆然と会社に通っている印象で、口癖は
『社長がそう決めたので』
まったく無気力社員で、これなら総務部長なんかいらない、とみんな影でささやいている」(メーカー/O氏)
「30代半ばのFさん。『俺、副業してるから』と残業もしないで、時折遅れてきたりもする。上に苦情を言ったら、採用時にFさんの副業を認めているとのこと。
異業種の転職でかなりの年収ダウンになったらしく、その補填に副業を許可することにしたらしい。はじめは
『Fさんは年も年だし、家庭もあるし、大変だろう』
とちょっと同情心もあったけど、すぐにそんな気持ちも吹き飛ぶ事実が判明。
Fさんはいくつものビジネスに手を出していたが、そのうちの一つに“健康にいいナントカの水”を売るというものがあって、こともあろうに社員に熱心にすすめはじめた。
気の弱い人や、お付き合いで買おうと言った人は、次々と健康食品を勧められ、そのうち
『もっと人を紹介してくれ』
『今度うちのミーティングにこないか』
とマルチっぽい事を言い始めた。
さすがに車内でも問題になってFさんは厳重注意。社内でのセールスは辞めると約束させられた直後に、うちの会社を辞めた。
仕事がしたかったのか、販売網を広げたかったのか今でも分からない」(情報/Nさん)
採用年齢の設置基準で一番多いのが、職場の平均年齢や、上司の年齢。俗にいう「年上の部下には指示しにくい」というものだ。年上・年下の壁を取り払って採用してくれたのであれば、転職者もそれに応える、素直な態度が必要になる。
また、「今までの自分」を引きずりすぎると、年齢理由にミスマッチだったと言われても仕方が無い。
一、年齢制限を越えて採用されたら、職場での年上・年下はひとまず考えない
一、今までのキャリアを武器にするのと、盾に取って自分のやり方を押すのは別
作者: 山本 靖雄, 板橋 征二
出版社/メーカー:東洋経済新報社
¥ 1,365 (税込)
転職コンサルタントが書いた、比較的高年齢向けの転職本。若者との差別化など中高年特有の転職のポイントが記されています。